レスベラトロールのさまざまな作用
以前よりカロリー制限はラットで老化を遅らせ、寿命を延長させることが知られている。そこでカロリー制限の機構を解明し、その効果のみを模倣する薬剤の開発が行われている。そのスクリーニングの結果、興味深いことにレスベラトロールが見出され、酵母の寿命をのばすことが報告された。その結果はNAD+依存性脱アセチル化酵素Sirtuinファミリーの活性化に由来すると報告されたが、Sirtuinはさまざまな転写調節に関与しており、核内受容体とともに相互作用していると考えられている。最近、DNAチップによる解析で、カロリー制限を行ったネズミと核内受容体PPARαのアゴニストを投与したネズミでは良く似た遺伝子の発現パターンを示すことが報告された。当研究室でも同様の結果をレスベラトロール投与で得ている。しかし一方で、レスベラトロールで活性化されるSirtuinはPPARγの活性化を抑制することで、白色脂肪細胞において脂肪代謝を活性化するという報告もなされた。この結果は、レスベラトロールがPPARγも同時に活性化するという当研究室の結果とは一致しない。
現在までの報告をまとめると上図のようになる。注目すべきことに、レスベラトロールに関して、さまざまなin vivoの結果を示す論文が多数報告されている。したがってPPAR、COX、Sirtuinがどのような関係にあるのかを明らかにすることは、生活習慣病予防の視点から今後も検討されるべき価値があると考えられる。