「フレンチパラドックス」と核内受容体PPARとの新しい接点
「フレンチパラドックス」という言葉は、中程度の赤ワイン消費が心血管病、脳卒中、痴呆の危険度と負の相関を示すことに由来している。赤ワインには、レスベラトロールとよばれるフィトアレキシン(抗菌性物質)が含まれており、このレスベラトロールの抗酸化活性が「フレンチパラドックス」に関与していると考えられてきた。
プロスタグランジン産生の律速酵素である誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現制御について、種々の疾患における役割を視野に入れて10年以上研究を続けてきた。その共同研究の中で、レスベラトロールが①COX-2の酵素活性や発現誘導を阻害すること、②核内受容体PPARαとPPARγを選択的に活性化すること、さらに③PPARαノックアウトマウスを用いた脳虚血モデル実験において、レスベラトロールの経口投与がPPARαを介して脳保護効果をもつことを見いだした。これらの知見から、「フレンチパラドックス」の新しい分子作用機構としてシクロオキシゲナーゼ(COX)経路とともにPPARが中心的な役割を演じているとい仮説を立て、現在研究を進めている。一方、レスベラトロールが寿命延長効果をもつカロリー制限模倣物質であることが報告され、PPAR活性化→カロリー制限→長寿効果がつながっていく可能性が出てきた。