PPAR

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 PPARは、核内受容体ファミリーに属するリガンド依存的転写因子です。リガンドがPPARと結合し、核内のレセプター応答配列に結合すると、その下流の遺伝子の転写が活性化されます。そして、タンパク質に翻訳され機能発現します。PPARは脂質代謝に関連するタンパク質の発現を促進することから生活習慣病の新しい標的と考えられます。PPARには、α、β/δ、γの三つのサブタイプが存在しています。αは、肝臓、小腸、筋肉などに発現しており、特に肝臓においては、脂肪酸の代謝や、糖新生やケトン体の生合成を促進することが知られています。リガンドであるフェノフィブラートは抗高脂血症薬として用いられています。β/δは、脂肪組織や骨格筋などの様々な組織に発現し、脂肪酸の代謝や熱産生に関与するタンパク質の発現を促進することが知られています。γは、脂肪細胞や肝臓などに発現し、脂肪の蓄積やインスリン感受性の改善に関与しています。リガンドであるチアゾリジン誘導体は、インスリンの抵抗性改善薬として働き、糖尿病の治療薬として使用されています。

用語解説


* 参照元 未記載の場合は生化学辞典 第2版 [東京化学同人]から参照

Cytoplasm [細胞質]


細胞を構成する核質以外の部分のこと。細胞膜に包まれ、顆粒を含まず透明で粘性の高い外質(透明質)と、顆粒を含み粘性が低く流動性に富む内質(顆粒質)とから成る。

Nucleus [核]


細胞内にあって遺伝情報源であるDNAの大部分を含む細胞小器官を核と呼ぶ。生物細胞は核の分化によって原核細胞と真核細胞に分けることができる。

Ligand [リガンド]


酵素に結合する基質、補酵素、調節因子のようにタンパク質と特異的に結合する物質を一般的にリガンドという。細胞膜上に存在する種々の受容体と結合するレクチン、ホルモン、神経伝達物質などをも指す。

mRNA [メッセンジャーRNA]


伝令RNAともいう。遺伝情報は一般的にDNA(RNAファージ、RNAウイルスの場合はRNA)中に保存され、そこに含まれている情報は種々のタンパク質の生合成という形を通じて発現されている。この過程ではDNAの情報はRNAポリメラーゼの作用により一本鎖RNAに転写され、ついでリボソーム上でtRNAの働きを通じてアミノ酸の配列順序に翻訳され、特定のタンパク質の合成につながっている。以上の過程中で生ずる、遺伝情報を転写した一本鎖RNAがmRNAとよばれるものである。

Transcription [転写]


DNA依存性RNA合成が行われる過程のこと。

Translation [翻訳]


mRNAの情報を読み取って、リボソーム上でタンパク質の生合成を行う過程のこと。

Protein [タンパク質]


生物体の主要構成成分。約20種のL-αアミノ酸(グリシンも含む)がペプチド結合により連結したポリペプチド鎖からなる。

PPARα


ペルオキシソーム増殖剤の多くは抗高脂血症薬として作用することから、PPARαは脂質代謝の調節において重要な役割をもつと推測されていた。ノックアウトマウスの解析から、ペルオキシソーム増殖剤の作用の大半はPPARαを介していることが証明された。(プロスタグランジン研究の新展開 [現代化学 増刊38]より参照)
肝臓・小腸・骨格筋に分布し、脂肪酸代謝・グルコース生成・ケトン体合成に関与する。

PPARβ/δ


各PPARアイソフォームの発現を調べたところ、PPARβ/δが着床部位において顕著に発現されていることがわかった。PPARβ/δの発現細胞はCOX-2の発現細胞と重複していた。(プロスタグランジン研究の新展開 [現代化学 増刊38]より参照)
広範に分布し、脂肪酸代謝と熱産生に関与する。

PPARγ


PPARγの生理機能としては、まず脂肪細胞の分化促進があげられる。また、PPARγのヘテロノックアウトマウスは、高脂肪食摂取時のインスリン抵抗性が野生型に比べて軽減されていたことから、野生型におけるPPARγの過剰な発現が糖尿病の発症を招くという考察がなされている。(プロスタグランジン研究の新展開 [現代化学 増刊38]より参照)
脂肪細胞・肝臓に分布し、脂質貯蔵とインシュリン感受性の改善に関与する。